年次有給休暇の買い取り

あなたが会社に勤める従業員の方でしたら、有給休暇は取りやすい環境でしょうか。

有給休暇は付与されてから2年間(時効)で消えてしまいます。

せっかくの有給休暇がただ消えていくのはもったいないですよね。

それでは、その消えていく有給休暇は会社に買い取ってもらえるのでしょうか?

あなたが会社の経営者や人事担当者でしたら、従業員の方から「有給休暇が全部取得できないので、消化できない分は買い取ってほしい」という希望を聞いたことはないでしょうか?

この記事では会社が有給休暇を買い取る義務があるのかについて書いていきます。

なおここでいう有給休暇は、労働基準法でいうところの「年次有給休暇」を指します。

会社は有給休暇を買い取る義務はない

まず結論ですが、会社は有給休暇を買い取る義務はありません。

従いまして、時効が来る前に計画的に有給休暇を取得していくことを推奨いたします。

これは従業員の方が退職する際も同じです。

ただし、会社が有給を買い取ることはできますので、この件については後ほど触れたいと思います。

なぜ会社に有給休暇を買い取る義務がないのでしょうか?

それは、有給休暇の目的に関係します。

有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して

心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために

付与される休暇のことです。

心身の疲労回復を目的にしている以上、有給休暇を取得せずその代わりに金銭で受け取ることは制度の主旨に合いません。

制度の目的と相反するので、原則として有給休暇の買取義務はないということになります。

会社が有給休暇を買い取ることができる場合

しかし次の①または②のいずれかに該当する場合には会社が有給休暇を買い取ることも可能です。

「買い取ることができる」にとどまり、買取義務まではありませんのでご注意ください。

① 法律を上回る有給休暇

例えば、フルタイムの従業員の方の場合は入社半年経過すると10日の有給休暇が付与されます。

10日を超える分で残ってしまった有給休暇は会社が買い取ることができます。

② 退職のため取得できない有給休暇

従業員の方の退職日まで日数がなく、退職日までに取得できない有給休暇は買い取ることができます。

ただし、①または②の場合も、買取額を高く設定することは望ましくありません。

買い取ってもらうためにわざと有給休暇を取得しない、ということが起こりうるためです。

このように会社が有給休暇を買い取ることは可能な場合もありますが、年10日以上有給休暇を付与される人には5日以上の取得義務がありますので、計画的に有給休暇を取得していくに越したことはありません。

社会保険労務士 加藤秀幸

出典

厚生労働省 有給休暇ハンドブック

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kinrou/dl/040324-17a.pdf