労務監査とは

最終更新: 2019年8月4日

「労務監査」という単語を耳にされたことはありますか。

労務監査を一言でいうと、会社の経営目標が効果的に達成できるよう、労働面で合理的かつ合法的か、活動を評価しアドバイスを行うことです。「労働面で」という部分が労務監査特有で、会計面での監査である会計監査とは異なります。

そんなこと言われても漠然としていますよね。それもそのはずで、労働面と言っても広範に渡りますので、雲をつかむような話と思われても当然です。

この記事では労務監査の一部ではありますが、労務監査の重要性と具体的に何をするかについて解説したいと思います。


労務監査とは、労働面で会社経営がうまくいっているか評価することです。この評価を2つに分けてみましょう。

  1. コンプライアンスの部分(法律を守っているか)

  2. 法律には書かれていないプラスアルファの部分

2の法律には書かれていないプラスアルファの部分は、分量が多くなりますので、また機会があれば書きたいと思います。今回は、中小零細企業だとなかなかコンプライアンスの部分が手薄になるケースをよく見てきましたし、良い/悪いの判断が比較的つきやすいので、1について少し掘り下げていきましょう。

コンプライアンスの重要性

コンプライアンス(法令遵守)は重要です。それは、法律を守っていないために後からトラブルになるケースが多いためです。トラブルの大小に関わらず、以下のことで会社と従業員の方との間で揉めたことはないでしょうか。

  • 給与(残業代)未払い請求

  • 長時間労働による精神疾患や過労死

  • セクハラ、マタハラ、パワハラの訴え

  • その他、ルールがなくて会社と従業員が揉めたこと

コンプライアンスがしっかりしていれば、これらトラブルをかなり減らすことができます。以下の具体例を見ると、納得いただけると思います。

労務監査(コンプライアンス)の具体例

前述のトラブル別に労務監査の項目を見ていきましょう。これらがすべてではありませんが、労務監査のチェック項目を守っていれば、自然とリスクを減らすことができます。

リスク:給与(残業代)未払い請求

  • 労働時間はタイムカード等客観的な方法で記録していますか。

  • 1日8時間または1週40時間を超える労働(残業)がある場合、割増賃金を支払っていますか。

  • 給与明細書に出勤日数、労働時間、有給休暇を記載していますか。

リスク:長時間労働による精神疾患や過労死

  • 1日8時間または1週40時間を超える労働(残業)がある場合、36協定は届け出ていますか。

  • 残業がある場合、36協定で定めた限度時間を守っていますか。

  • インターバル制度(退勤後、次の出勤時刻まで一定の時間を空ける制度)は導入していますか。

リスク:セクハラ、マタハラ、パワハラの訴え

  • 育児介護休業規程は最新の法改正に対応できていますか。

  • セクハラやマタハラ、パワハラの相談窓口はありますか。

リスク:その他、ルールがなくて会社と従業員が揉めたこと

  • 常時10人以上の労働者がいる場合には就業規則を作成し労働基準監督署に届け出ていますか。

  • 雇用するすべての労働者に労働条件通知書を交付していますか。

  • 減給や解雇など懲戒処分の理由を定めていますか。

労務監査の項目についてイメージを持っていただけたでしょうか。上述の質問項目は本来確認すべきものの中でもごく一部です。厚生労働省のサイトで簡易の労務監査の他の質問項目もご覧いただくことができますので、お時間ございましたら以下のURLをお試しください。

https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/

あくまでも労務監査の目的は、会社の経営目標の達成ではありますが、労務監査を定期的に実施しコンプライアンスを徹底しておくと、労働基準監督署の調査対応のコストも減らす効果を期待できます。労働基準監督署の調査が入れば、労務監査の質問項目の一部または全部を確認し、もし違法の部分があれば適法になるまで調査は続くためです。

まとめ

  • 労務監査の項目は多岐に渡る。

  • コンプライアンスに限って労務監査をするだけでも、法的なリスクを減らすことができる。

労務監査でお手伝いが必要になりましたらメイトー社会保険労務士事務所までご依頼ください。

社会保険労務士 加藤秀幸


出典(厚生労働省)

スタートアップ労働条件~事業者のための労務管理・安全衛生管理診断サイト~(厚生労働省)