適切な労務管理のポイント/労働条件の変更
労働条件の引下げ等を行う場合は、法令等で定められた手続等を遵守し、労使間で事前に十分な話合いなどを行うことが必要です。
(1) 合意による変更
労働契約の変更は、労働者と使用者が合意して行うことが原則です。(労働契約法第3条)
労働者と使用者が合意すれば、労働条件を変更することができます。(労働契約法第8条)
(2) 就業規則による変更
原則として、使用者が一方的に就業規則を変更して、労働者の不利益に労働条件を変更することはできません。
ただし、次の2つの要件を満たす場合は、就業規則を変更して労働条件を変更できます。
・就業規則の変更が合理的であること ・変更後の就業規則を労働者に周知させること
(3) 配置転換
配置転換を命ずるには、就業規則等にその根拠を置くことが望まれます。
裁判例では、就業規則に配置転換を命ずることができる旨の定めがある場合でも、配置転換は無制限に認められるわけではなく、①不当な動機・目的の有無や、②配置転換命令の業務上の必要性とその命令がもたらす労働者の生活上の不利益とを比較衡量した結果により、配置転換命令が権利濫用に当たると判断され無効となる場合もあります。
■裁判例 (最高裁第二小法廷 昭和61年7月14日判決)
転勤命令について、業務上の必要性がない場合又は業務上の必要性がある場合であっても、他の不当な動機・目的から転勤命令がなされたとき、もしくは転勤命令が労働者に対し通常受け入れるべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときには、当該転勤命令は権利の濫用になる。
配置転換命令が無効とされた裁判例
自らの社内での配置先を探させられるほかは、単純労働のみを行うような部署へ配属することは、人事権の裁量の範囲を逸脱した違法なものとして無効となる場合があるとする裁判例があります。これに類似するような、社内配置転換・子会社や人材会社等への出向をさせ、配置転換先等で自らの次の配置転換先、再就職先、出向先を探させるような業務命令は、働く方々が安心して働ける職場環境という観点からは、不適切であることから、配置転換等を命ずるに当たっては、上記の裁判例(最高裁第二小法廷 昭和61年7月14日判決)が示している業務上の必要性やその動機・目的及び労働者が被る不利益の程度を十分に踏まえた上で対応するようにしてください。
■裁判例 (東京地裁立川支部 平成24年8月29日判決)
人財部付に配属された社員は名刺も持たされず、社内就職活動をさせられるほかは、単純労働をさせられたのみであること、人財部付の制度の運用が開始された当初は、配属先が見つかればD評価、見つからなければE評価という運用がなされていたこと、電話にも出ないよう指示されていたこと等を総合すると、人財部付は実質的な退職勧奨の場となっていた疑いが強く、違法な制度であったといわざるを得ない。人財部付で他の異動先が見つからなかったメンバーはいずれも業務支援センターに配属されていること、他部署から受注した業務の大半は単純作業であること、業務支援センターのメンバーは社内ネット、イントラネット上の人財部ホルダーやチームサイトにアクセスができない状況にあること、人財部担当者一覧には、業務支援センターの名前、メンバーの氏名などが一切記載されていないこと等を総合すると、到底、人財部の正式な部署といえるような実態ではなく、人財部付の延長線上にあるといわざるを得ず、違法な実態を引き継いでいると認められる。そうすると、原告に対する人財部業務支援センターへの配転命令は、人事権の裁量の範囲を逸脱したものでありその効力はないと解するのが相当である。
配置に関する配慮
労働者を転勤させようとする場合、労働者の育児又は介護の状況に配慮しなければなりません。
出典
適切な労務管理のポイント - 厚生労働省
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