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適切な労務管理のポイント/解雇・雇止め(整理解雇・退職勧奨・勤務成績を理由とする解雇)



日本では解雇がなかなか認められにくいことはご存じでしょうか。


「認められにくい」というのは、裁判になった場合に会社側が不利(労働者側が有利)という意味です。


整理解雇、退職勧奨、勤務成績を理由とする解雇について、裁判例と共に見ていきましょう。



整理解雇


整理解雇について、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、権利の濫用として、労働契約法の規定により、無効となります。これまでの裁判例を参考にすれば、労働組合との協議や労働者への説明を行うとともに、次のこと等について慎重に検討を行うことが望まれます。

・ 人員削減を行う必要性

・ できる限り解雇を回避するための措置を尽くすこと

・ 解雇対象者の選定基準が客観的・合理的であること

※解雇回避のための方法として、例えば、配置転換、出向、希望退職募集等を検討することが考えられます。

※人員削減を避けるために、労働時間の短縮(ワークシェアリング)を行うことも、一つの方策です。


■裁判例 (大阪地裁 平成12年12月1日判決)

余剰人員となったというだけで解雇が可能なわけではなく、これが解雇権の行使として、社会通念に沿う合理的なものであるかどうかの判断を要し、その判断のためには、人員整理の必要性、人選の合理性、解雇回避努力の履践、説明義務の履践などは考慮要素として重要なものというべきである。



退職勧奨


裁判例では、被勧奨者の自由な意思決定を妨げる退職勧奨は、違法な権利侵害に当たるとされる場合があります。同様に、退職誘導を目的とした行為も、退職させるための嫌がらせとして、不法行為責任を負うとする裁判例があります。


■裁判例 (最高裁第一小法廷 昭和55年7月10日判決)

ことさらに多数回、長期にわたる退職勧奨は、いたずらに被勧奨者の不安感を増し、不当に退職を強要する結果となる可能性が高く、退職勧奨は、被勧奨者の家庭の状況、名誉感情等に十分配慮すべきであり、勧奨者の数、優遇措置の有無等を総合的に勘案し、全体として被勧奨者の自由な意思決定が妨げられる状況であった場合には、当該退職勧奨行為は違法な権利侵害となる。


■裁判例 (東京地裁 平成14年7月9日判決)

一連の行為は、その経緯に照らすと、原告を被告会社の中で孤立化させ、退職させるための嫌がらせといわざるを得ず、Hが懲戒解雇された以降は、その傾向が顕著に現れている。そして、程度の差はあれ、このような嫌がらせが原告の入社後間もないころから本件解雇の直前まで長期間にわたり繰り返し行われたこと、被告会社の代表者であった被告丙山と被告乙原は当初からこのような事実を知りながら特段の防止措置をとらなかったこと、一部の行為は業務命令として行われたことからすると、これらの行為はいずれも被告会社の代表者である被告丙山及び被告乙原の指示ないしその了解に基づいて行われたものというべきであるから、被告丙山と被告乙原は、それぞれ民法第709条の不法行為責任を負う。



勤務成績を理由とする解雇


就業規則に「労働能力が劣り、向上の見込みがない」ことを解雇事由として掲げていても、相対評価の考課順位が下位であることを理由に直ちに著しく労働能力が劣るとはいえないとし、さらに、労働者の労働能力の向上を図る余地があったにもかかわらず体系的な教育・指導が行われなかったとして、解雇を権利の濫用と認めた裁判例があります。


■裁判例 (東京地裁 平成11年10月15日決定)

従業員として、平均的な水準に達していなかったからといって、直ちに本件解雇が有効となるわけではない。就業規則に定める「労働能力が劣り、向上の見込みがない」に該当するといえるためには、平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働能力が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければならないというべきである。

…右人事考課は、相対評価であって、絶対評価ではないことからすると、そのことから直ちに労働能率が著しく劣り、向上の見込みがないとまでいうことができない。…さらに体系的な教育、指導を実施することによって、その労働能率の向上を図る余地もあるというべきであり、…いまだ「労働能力が劣り、向上の見込みがない」ときに該当するとはいえない。


■裁判例 (東京地裁 平成13年8月15日決定)

長期雇用システム下で定年まで勤務を続けていくことを前提として長期にわたり勤続してきた正規従業員を勤務成績・勤務態度の不良を理由として解雇する場合は、労働者に不利益が大きいこと、それまで長期間勤務を継続してきたという実績に照らして、それが単なる成績不良ではなく、企業経営や運営に現に支障・損害を生じ又は重大な損害を生じる恐れがあり、企業から排除しなければならない程度に至っていることを要し、かつ、その他、是正のため注意し反省を促したにもかかわらず、改善されないなど今後の改善の見込みもないこと、使用者の不当な人事により労働者の反発を招いたなどの労働者に宥恕すべき事情がないこと、配転や降格ができない企業事情があることなども考慮して濫用の有無を判断すべきである。



会社側としては厳しい裁判例だったのではないでしょうか。


普段から適切な労務管理が必要ですね。

 

出典


適切な労務管理のポイント - 厚生労働省




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